人工肛門や人工膀胱、尿路変更術で障害年金を請求するポイント
人工肛門や人工膀胱も障害年金の対象となります。
ここでは、人工肛門や人工膀胱で障害年金を請求するに当ってのポイントや注意点について解説します。
人工肛門・人工膀胱や尿路変更術で障害年金は支給されます
身体障害者手帳と障害年金で異なる等級
人工肛門・人工膀胱、尿路変更術は、身体障害者手帳では「4級」と認定されているため、障害年金の対象ではないと思っている方が多くいらっしゃいます。
障害年金では人工肛門や人工膀胱、尿路変更術を施したものは「3級」として認定されています。
初診日に国民年金の被保険者の場合、障害年金が支給されないのか?
障害年金の等級で3級があるのは、厚生年金保険だけの制度となりますので、初診日に厚生年金の被保険者であった場合に障害年金の対象になります。
では、初診日に国民年金の被保険者であった場合はどうでしょうか? この場合、人工肛門・人工膀胱、尿路変更術を施してもなお、術後の状態が良くない場合には障害年金の対象とされています。
例えば、次のような場合に、2級以上と認定されることがあります。
- 人工肛門を造設し、かつ、新膀胱を造設したもの又は尿路変更術を施した場合
- 人工肛門を造設し、かつ、完全排尿障害(カテーテル留置又は自己導尿の常時施行を必要とする)状態にあるもの
- 全身状態、術後の経過及び予後、原疾患の性質、進行状況等が良くない場合
行政機関の窓口で「あなたは初診日で国民年金の被保険者だったので、人工肛門では障害年金を受給することは難しい」と言われた場合でも、上記のようなケースだと障害基礎年金を受給できる可能性があります。
弊所がサポートした事例では、クローン病が原因で人工肛門となった方で障害基礎年金2級に決定された事例があります。初診日に国民年金の被保険者だったからと諦めることがないようにしたいです。
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人工肛門や人工膀胱を装着した場合の障害認定日は
障害年金の障害認定日(障害の状態を判断する日)は、「初診日から起算して1年6ヵ月後」というのが原則です。しかし、初診日から1年6ヵ月が経過する前に人工肛門などを装着した場合の障害認定日は通常とは異なっています。
・初診日から1年6ヵ月以内に人工肛門を造設または尿路変更術を施した
請求できる日 | 準備する診断書 |
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手術日から6ヵ月経過した日 | 「手術日」から6ヵ月経過した日から3ヵ月以内の日付のもの |
・初診日から1年6ヵ月以内に新膀胱を造設した
請求できる日 | 準備する診断書 |
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手術日からすぐ | 「手術日」から3ヵ月以内の日付のもの |
・初診日から1年6ヵ月以内に人工肛門を造設し、かつ、新膀胱を造設した
請求できる日 | 準備する診断書 |
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人工肛門を造設した日から起算して6ヵ月を経過した日「又は」新膀胱を造設した日のいずれか遅い日 | 人工肛門を造設後6ヵ月「又は」新膀胱を造設した日のいずれか遅い日から3ヵ月以内の日付のもの |
・初診日から1年6ヵ月以内に人工肛門を造設し、かつ、尿路変更術を施した
請求できる日 | 準備する診断書 |
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人工肛門を造設した日「又は」尿路変更術を施した日のいずれか遅い日から6か月を経過した日 | 人工肛門を造設した日「又は」尿路変更術を施した日のいずれか遅い日から6ヵ月経過した日から3ヵ月以内の日付のもの |
・初診日から1年6ヵ月以内に人工肛門を造設し、かつ、完全排尿障害状態にある場合
請求できる日 | 準備する診断書 |
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人工肛門を造設した日「又は」完全排尿障害状態に至った日のいずれか遅い日から6ヵ月経過した日 | 人工肛門を造設した日「又は」完全排尿障害状態に至った日のいずれか遅い日から6ヵ月経過した日。その日から3ヵ月以内の日付のもの |
障害年金の請求で必要な書類(初診日の証明)
障害年金は、「初診日」時点においてどの制度(国民年金・厚生年金)に加入していたか判断され、保険料納付要件を満たしているのか確認されます。このため、障害年金の請求では「初診日」が非常に重要になります。
「受診状況等証明書」や「受診状況等証明書が添付できない申立書」は、原因となった疾病によって最初に病院に行った日を証明するための書類です。
初診日の証明(受診状況等証明書)
初診から請求時まで同一の医療機関に通院している場合は「受診状況等証明書」は必要ありません。
初診の医療機関と現在通院している医療機関が異なる場合に必要な書類となります。
診断名が確定した病院ではなく、体調が悪くなって初めて病院を受診した日が障害年金の制度での初診日となります。初診日の証明(受診状況等証明書)はその病院で作成してもらうことになります。
受診状況等証明書が添付できない申立書
カルテの保存期限が5年となっているため、初診日が5年以上前にある場合は、医療機関へ「受診状況等証明書」を依頼しても記入してもらえない場合があります。
初診の医療機関でカルテが破棄されていた場合には、「受診状況等証明書」は取得できません。そのような場合には、転院した先の医療機関にカルテが保管されているかを照会します。
そこにもカルテがなかった場合には、次の転院先へと順次確認していきます。
最終的にカルテが残っている医療機関で「受診状況等証明書」を書いてもらいます。
カルテがなかった医療機関については、ご自分で「受診状況等証明書が添付できない申立書」を用意します。
審査側は、その受診状況等申立書が添付できない申立書で初診日が分かりますか?
「受診状況等証明書が添付できない申立書」をご自分で用意した場合、その医療機関を受診していたことが分かる客観的な参考資料、例えば、お薬手帳や診察券、保険調剤明細書などを探し、「受診状況等証明書を添付できない申立書」と一緒に提出します。
審査側が、「参考資料」を見て、「この時期に」「この症状で」「医療機関を受診していたんだ」と納得してもらえるかをご自分で考えてみてください。
参考資料が何も用意されていない場合、「初診日」が認められることはほとんどありませんので注意してください。
障害年金の請求で必要な書類(診断書)
障害年金で使用する診断書は、「血液・造血器・その他の障害用」になります。
診断書裏面の人工臓器等に記入漏れがないか確認しましょう。
人工肛門・人工膀胱、尿路変更術を施してもなお、術後の状態が良くない場合など、障害等級3級以上に該当する可能性がある場合は、診断書表面⑫一般状態区分と診断書裏面⑮の自覚症状や他覚所見などの記載内容が重要になります。
障害年金の請求で必要な書類(病歴・就労状況等申立書)
初診日の証明ができ、症状が正しく反映された診断書を取得した後は、「病歴・就労状況等申立書 (PDF)」を記入します。
体調が悪化してきた発病時から現在までの経過を整理し、年月順に記入していきます。 これには通院期間や入院期間、医師から指示された事項や就労状況や日常生活状況、受診していなかった期間はなぜ受診をしなかったのかなどを具体的に記入していきます。診断書は現在の病状を表すもので、病歴・就労状況等申立書はこれまでの病状の経過を表すものと言えます。
人工肛門や人工膀胱、尿路変更術へと至ったこれまでの経緯を丁寧に記載していきましょう。
人工肛門・人工膀胱や尿路変更術で障害年金をサポートした事例集
当事務所が担当させていただいた案件を一部ご紹介いたします。
» 人工肛門・人工膀胱や尿路変更術の方の障害年金事例集
ご不安な方は、障害年金の専門家への相談しましょう。
実際に障害年金を請求する際には、障害年金に関する知識を抑えた上で、年金事務所へ足を運び煩雑な処理を正しい手順で進めていく必要があります。障害年金は複雑で一般の方には難しい点も多々あります。おそらく、一生に一度しかない手続きを、何度も年金事務所や病院に足を運び、初診日を証明するための書類や診断書の内容に間違いがないかなどを確認していくのは大変だと思います。不安や分からないことがある場合は、障害年金を扱っている法律の専門家(社会保険労務士など)に相談しましょう。
かなみ事務所(川西市)は、兵庫・大阪での障害年金の請求をサポートいたします
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