腎炎が原因で腎疾患になった場合と障害年金
腎炎(糸球体腎炎・ネフローゼ症候群・IgA腎症・腎盂腎炎)が原因で腎不全になった場合にも障害年金の対象です。
ここでは、障害年金を請求する場合のポイントや注意点を解説します。
腎疾患の障害年金認定基準
腎臓の障害の障害認定基準では、次のようにされています。
支給される障害年金額は等級別の障害年金の年金額をご参照ください。
等級 | 障害の程度 |
---|---|
1級 | 病態別の検査項目及び異常値の①が高度異常を1つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表の(オ)に該当するもの |
2級 | ・病態別の検査項目及び異常値の①が中等度又は高度の異常を1つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表の(エ)又は(ウ)に該当するもの
・人工透析療法施行中のもの |
3級 | ・病態別の検査項目及び異常値①の検査成績が軽度、中等度又は高度の異常を1つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表の(ウ)又は(イ)に該当するもの
・病態別の検査項目及び異常値②の検査成績のうちアが異常を示し、かつ、イ又はウのいずれかが異常を示すもので、かつ、一般状態区分表の(ウ)又は(イ)に該当するもの |
病態別の検査項目及び異常値
慢性腎不全
区分 | 検査項目 | 単位 | 軽度異常 | 中等度異常 | 高度異常 |
---|---|---|---|---|---|
ア | 内因性クレアチニンクリアランス | ml/分 | 20以上30未満 | 10以上20未満 | 10未満 |
イ | 血清クレアチニン | mg/dl | 3以上5未満 | 5以上8未満 | 8以上 |
(注)eGFR(推算糸球体濾過量)が記載されていれば、血清クレアチニンの異常に替えて、eGFR(単位はml/分/1.73 ㎡)が10 以上20 未満のときは軽度異常、10 未満のときは中等度異常と取り扱うことも可能。
ネフローゼ症候群
区分 | 検査項目 | 単位 | 異常 |
---|---|---|---|
ア | 尿蛋白量
(1日尿蛋白量又は尿蛋白/尿クレアチニン比) |
g/日
又は g/gCr |
3.5以上を持続する |
イ | 血清アルブミン | g/dl | 3.0以下 |
ウ | 血清総蛋白 | g/dl | 6.0以下 |
障害年金の請求で必要な書類(初診日の証明)
障害年金は、「初診日」時点においてどの制度(国民年金・厚生年金)に加入していたか判断され、保険料納付要件を満たしているのか確認されるため、障害年金の請求では「初診日」が非常に重要になります。
腎炎が原因により腎不全にいたった場合、両者の間の期間が相当長い場合であっても因果関係があったと考えられるため、腎炎で初めて医師の診察を受けた日が障害年金の初診日とされます。腎炎から腎不全に至るまでの経過は個人により様々でしょうが、数年から数十年経過していることが多いため、初診日が相当過去になり、初診日の特定が困難になってきます。
「初診日」が曖昧なままでも、請求すれば認めてもらえるなどと安易に考えないようにしないでください。
腎炎で最初に病院に行った日を証明する書類としては「受診状況等証明書」や「受診状況等証明書が添付できない申立書」となります。
受診状況等証明書
初診から請求時まで同一の医療機関に通院している場合は「受診状況等証明書」は必要ありません。
初診の医療機関と請求時に通院している医療機関が異なる場合に必要な書類になります。
腎炎が原因で腎不全となっている方の多くは、初診から請求時まで数十年経過しているため、請求時の医療機関と初診時の医療機関は異なっていると思います。
このため、受診状況等証明書が必要になってくる方が多いと思います。
受診状況等証明書が添付できない申立書
カルテの保存期限が5年となっているため、初診日が5年以上前にある場合は、医療機関へ「受診状況等証明書」を依頼しても記入してもらえない場合があります。
初診の医療機関でカルテが破棄されていた場合には、「受診状況等証明書」は取得できません。そのような場合には、転院した先の医療機関にカルテが保管されているかを照会します。そこにもカルテがなかった場合には、次の転院先へと順次確認していきます。最終的にカルテが残っている医療機関で「受診状況等証明書」を書いてもらいます。
カルテがなかった医療機関については、ご自分で「受診状況等証明書が添付できない申立書」を用意します。
受診状況等申立書が添付できない申立書で初診日が分かりますか?
「受診状況等証明書が添付できない申立書」をご自分で用意した場合、その医療機関を受診していたことが分かる客観的な参考資料、例えば、お薬手帳や診察券、保険調剤明細書などを探し、「受診状況等証明書を添付できない申立書」と一緒に提出します。
障害年金の審査をする者が、「参考資料」を見て、「この時期に」「この症状で」「医療機関を受診していたんだ」と納得してもらえるかをご自分で考えてみてください。
参考資料が何も用意されていない場合、「初診日」が認められることはほとんどありませんので注意してください。
初診日を客観的に証明できる資料は…
障害年金の請求で初診日を認めてもらうためには、初診日を客観的に証明できる資料を探す必要があります。たとえば次のような資料が残っていないか探してみましょう。
参考資料 | 取得先 |
---|---|
身体障害者手帳申請時の診断書 | 診断書を作成した医療機関 市役所または都道府県庁の障害福祉課 |
生命保険診断書 | 生命保険会社 ※初診日頃に生命保険を請求している場合など |
診療録 | 受診状況等証明書を作成した医療機関 |
診療報酬明細書 | 健康保険協会や健康保険組合 |
これら以外にも初診日を証明できる資料がないか根気よく探しましょう。
「初診日」が曖昧なまま、障害年金を請求することのないようにしてください。
初診日を特定できる参考資料がない場合
初診日を特定できる資料ない場合、次のような方法が可能か考えてみましょう。
健康診断で異常を指摘された日
平成27年10月1日以降、「初診日は、原則として初めて治療目的で医療機関を受診した日とし、健康診断を受けた日(健診日)は初診日として取り扱わないこととする。」とされました。
しかし、これには例外があり、「初めて治療目的で医療機関を受診した日の受診状況等証明書が得られない場合であって、医学的見地からただちに治療が必要と認められる健診結果である場合については、請求者から健診日を初診日とするよう申し立てがあれば、健診日を初診日とし、健診日を証明する資料(人間ドックの結果など)を求めた上で、初診日を認めることができることとする。」とされています。
つまり、健康診断の受診日を初診日として請求することも可能といえます。
医療機関で初診日の証明が取れず、客観的な資料も準備できない場合には、健診日を初診日として請求できないか考えてみましょう。
初診日が一定の期間にあることが確認できる場合
初診日を具体的に特定できない場合でも、参考資料により一定の期間内に初診日があると確認された場合には、一定の条件の下で、請求者が申し立てた初診日を認められることがあります。
例えば、腎炎の発生時期とされる始期と終期を特定し、どちらの時期においても保険料納付要件を満たしているなどの要件を満たす場合には、初診日が認められる可能性があります。
>>初診日が一定の期間内にあると確認された場合の初診日確認の取扱いについて
第三者証明を取得できる場合
初診日となる時期に医療機関で診療を受けていたことを第三者(請求者の民法上の三親等以外の親族)が証明した場合には初診日を合理的に推定するための参考資料とされる場合があります。
・第三者証明を行う者が、請求者の初診日頃の受診状況を直接的に見て認識していた場合
・第三者証明を行う者が、請求者や請求者の家族等から、請求者の初診日頃に、請求者の初診日頃の受診状況を聞いていた場合
・第三者証明を行う者が、請求者や請求者の家族等から、請求時から概ね 5 年以上前に、請求者の初診日頃の受診状況を聞いていた場合
>>20歳前に初診日がある場合の第三者からの申立書 (第三者証明)について
>>20歳以降に初診日がある場合の第三者からの申立書 (第三者証明)について
障害年金の請求で必要な書類(診断書)
障害年金で使用する診断書は、「診断書(腎疾患・肝疾患・糖尿病の障害用)」になります。
初診日から1年6か月以内に人工透析療法を始めた場合には、人工透析療法を初めて受けた日から起算して3月を経過した日に障害年金を請求することができます。
必要となる診断書は、3月を経過した日から3ヵ月以内のものを用意します。
腎炎が原因で長い期間を経てから人工透析が必要になった場合には、透析療法の開始から3ヵ月待つ必要はなく、すぐに障害年金を請求することができます。
腎疾患の場合にはアンケートの提出を要求される場合がある
腎臓疾患の場合、初診日に関するアンケート(障害年金の初診日に関する調査票(腎臓・膀胱の病気用))の提出が必要となる場合があります。
アンケートには、体の不調やむくみはいつ頃からあったのか、健康診断などで尿蛋白を指摘されたことはあったのか、健康診断で指摘を受けた場合にすぐに病院へ行ったのかなどが質問されています。
このアンケートも障害年金の審査の参考とされるため、受診状況等証明書や診断書、病歴就労状況等申立書などの書類と間違いがないように作成してください。
障害年金の請求に必要な書類(病歴・就労状況等申立書)
初診日の証明ができ、症状が正しく反映された診断書を取得した後は、「病歴・就労状況等申立書」を記入します。
発病時の状況、それによって初めて医療機関を受診した経緯、現在までの経過を整理して年月順に記入していきます。特に初診の医療機関で「受診状況等申立書」が取れず、やむを得ず「受診状況等申立書が添付できない申立書」と参考資料を提出するような時は、この病歴・就労状況申立書が非常に重要になりますので、丁寧に記載します。
発病時から初診時までの経緯を記載した後は、通院期間や入院期間、医師から指示された事項や日常生活状況。受診していなかった期間には、なぜ受診をしなかったのかなどを具体的に記入していきます。
診断書は現在の病状を表すもので、病歴・就労状況等申立書はこれまでの病状の経過を表すものと言えます。
>>病歴・就労状況等申立書の記入方法ははこちらからご覧ください。
面倒な請求は、専門家に任せてしまうのも一考です
障害年金を請求するためには、様々な書類の準備や手続きが必要です。それぞれの書類にはチェックしておきたい項目がいくつもあります。初診日の証明ひとつでも、カルテの保存期限(5年)を超過している場合には初診日の証明ができないこともあります。そういった時には次の転院先の医療機関で証明が取れるのか。仮に取れたとしても、先の医療機関の初診日に関する記載はあるのかなど…
おそらく、一生に一度しかない手続きを、何度も年金事務所や病院に足を運び、初診日を証明するための書類を揃えていくのは大変だと思います。また、慣れない書類の準備や請求の手続きをするのは困難な場合も多いでしょう。
そんな時は、確実な手順で障害年金請求の手続きを進めてくれる専門家に依頼することをオススメします。
かなみ事務所(川西市)は、兵庫・大阪での障害年金の請求をサポートいたします
対象地域は大阪・兵庫(詳細はこのページ下の対応地域をご覧ください)で、無料相談や出張相談を承っております。その他の地域でも対応が可能な場合もございますので、お気軽にご利用ください。
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